台湾を南北に貫く中央山脈は険しいです。特に,中央部は常に標高2000mを超えており,さらに東西に伸びる谷は深く,人を簡単には寄せ付けない渓谷地帯となっています。そんな渓谷を行く貴重な舗装路が台湾には数本だけ存在するのですが,そのうちの一本を自転車で走ることにしました。
ログ
後述しますが,実際の計画とは異なるルートを走ったため,距離は約133.2km,獲得標高は約2662mとなりました。 ダイナミックな渓谷を走った割に獲得標高が少なめなのが良かったです。距離に関しては,ルート変更後の進路に手頃な鉄道駅がなく,結果的に自宅付近まで走ることになったため伸びました。台湾は長距離移動に適した鉄道網が整備されている一方で,都市部ではそれほど鉄道網が発達しているわけではないため,サイクリング終盤で都市部に入ったとしても鉄道駅まで遠いということがあります。うまくやれば簡単に鉄道駅に到達できるのですが,今回はうまくいきませんでした。
実走
移動
台北駅からサイクリングのスタート地点まで電車で移動します。今回予約した電車は台北駅を5:59に出発する電車です。毎度のごとく,MRTの始発が6時なので,台北駅まで自走するほかありません。早朝の台北市内の道路は空いており,快適に走ることができました。中正記念堂はライトアップや雰囲気ゆえ夜も良いらしいですが,早朝だと逆に何もなくてよく分かりません。
台北駅は立派な駅舎で,中も広く中央広場もあります。中央広場に昼間に行くと,列車を待っているのであろう人が大勢地べたに座ったり寝転んだりしているのですが,早朝に来ても少々人がいました。
地下ホームに降りると,環島列車が停車していました。環島列車は台湾を一周する観光列車で,莒光号(きょこうごう)に充当される車両がサンリオキャラクターとコラボしたラッピングと内装になっています。1日で一周できるのですが,途中下車できる時間が少なく耐久の様相を呈するので(少なくとも筆者は嫌です),南部まで利用して一泊するなりした後に特急列車で帰るのが良さそうです。これで西回りで台東や花蓮まで行って下車し,観光したのちに普悠瑪号などで台北に戻る行程を組んでみたいです。さて,5:59発の自強号が台北駅に到着し,定刻通り出発しました。この電車は縦貫線の終点高雄を越え,南廻線の終点台東まで行きます。距離を計算すると台北駅から559.3kmもあります。全区間の表定速度が89km/hなので,まあまあ速い気がします(参考:京成スカイライナーや特急おおぞらと同じ)。
朝の車窓はやはり素晴らしいです。新北市の中心地,板橋を過ぎると線路は地上に出ます。写真を見てわかる通り,椅子が硬いです。
1時間ほどで新竹駅に到着しました。ここで一旦下車し,内湾線に乗り換えます。台湾では列車の種別ごとに距離運賃が決まっています。それゆえ,特急から区間車など種別をまたいで乗り継ぐ際には,運賃の精算をしなければなりません。運賃の精算をしなくても乗り換え自体はできますが,終着駅でちょっと面倒なことになりそうなので(語学力が足りない),先に新竹駅で改札を出て精算することにしました。ちなみに台鉄は全駅でICカードが使えるので,ICカードで入り直しました。
内湾線の車両に乗ります。行き先幕の字体がアナログでこれまた良いです。長野エリアで211系のアナログな「松本」の行き先表示幕を見た時と同じ感じです。ところで,新竹駅から内湾駅まで直通する内湾線の列車は少ないです。多くが途中の竹中駅で分岐して高鐵の新竹駅(在来線の六家駅)へ向かいます。特に,土日祝日に内湾に向かう列車は朝の3本と夕方の1本のみで,それ以外は竹中駅での乗り換えが必要です。今回の列車はその朝の3本のうちの1本です。
新竹駅から1時間ほどで内湾駅に到着しました。日曜日なだけあって行楽客が多いです。特に,ハイキングに行く感じの客が多そうです。どこの山に行くんでしょうか?
自転車パート
自転車を組み立ててすぐにスタートします。駅からもう少し山のほうに行ってもまだコンビニがあるのでここでは特に補給を買いませんでした。
この辺は温泉街が沢山あるようです。
早速険しい山道に入りました。この崖を削って作られたような道は太魯閣国家公園内の渓谷沿いの道みたいです。まだ行ったことないですが。
内湾駅が標高250m程で,最初の峠が標高1500m程なので一気に1250m上げます。細かいアップダウンよりも一気に上がってから標高を下げてしまうほうが楽という法則があります。その法則に従って行程を組んだのですが,後に期待を裏切られます。
峠に到着しました。結構自転車で登っている人がいます。県境でも何でもないので,目印っぽい看板はありませんでした。ただ,頂上にカフェや屋台がちょこちょこあり,賑やかそうな場所ではありました。何も買いませんでしたが。
↓GoogleMapでこの辺りです。
峠から少し下る道の途中で撮りました。Googleマップで言うところの右下(南東方向)を向いています。写真の奥の山に写っている集落っぽいのが,尖石郷と呼ばれる場所です。その奥の山は馬惱山でしょうか。馬惱山は標高が2679mもあるらしいです。えらい険しい場所ですね。
この後,記事の最初の地図にある通り北東方向に行くわけですが,分岐を間違えて全然違う場所に向かってしまいました。それがちょうど尖石郷の下でした。しかも分岐は峠のほぼ近くにあるのに,ここまで峠から400downほどしてしまいました。先ほどの峠付近まで400upして戻らなければいけません。
何かを呪いながら400upして峠近くの本来曲がるべき分岐まで戻りました。写真左から後ろに伸びている舗装路が間違って下ってしまった道で,曲がるべき方向はこの右奥に向かう方向でした。桃園や宜蘭方面とやら,わかりやすい地名を書いてくれたらよかったのですが,何もなかったので間違えました。あまり使われない道なのでしょうか。何か書いてある看板があればそれを見逃した自分を呪う必要がありますが,何も書いていなかったので自分を呪わずにすみました。
峠付近の分岐からダウンして川沿いまで降りてきました。この川は大漢渓と呼ばれ,はるばる淡水河まで流れていくそうです。川が青くて素晴らしいので,大漢ブルーと名付けました。
途中から桃園市に入ったのですが,路面状況が悪くなってきました。谷沿いのちょっと砂利が散らばっている一車線の道はなんとなく既視感があります。ここが国道ではなく,県道的な位置づけだからでしょうか?
台7に合流しました。台7は西の桃園市から東の宜蘭県まで山の中を貫く省道です。別名北橫公路と呼ばれ,台湾の中央山脈を貫く3つの省道のうちの一つです。このまま,巴陵方面に曲がり峠を越え,宜蘭に向かいます。
何と宜蘭へ向かう峠越え区間は通行止めで,1日1時間だけ開放でした。ちゃんと台湾の道路webに書いていましたが,通行止めではなく工事情報のところに書いてあったので見逃してしまいました。自分を呪う。しかも,ここに到着したのは14:27だったので,先ほどの道間違いと引き返しがなければ間に合っていました。友人が3年前もこの時間制限があったことを教えてくれました。
とりあえず巴陵に戻り,売店で補給を買って食べました(良さげなレストランが開いていなかったので)。巴陵は塔曼山方面へ向かう麓の少し大きい村のようです。それはさておき,売店のおばちゃんに事情を聞いたうえで,桃園方面に行くしかないことを確認しました。
台7をひたすら下っていきます。ただ,山沿いの険しい道らしく,アップダウンが多くかなり大変でした。さっきの最初の峠から台7までの道もそうだったんですが,アップダウンが激しいです。
この辺りは地層がもろいようです。対岸の崖崩れの下にガードレールのようなものが落ちていて,どこに道があったんだと不思議に思っていたんですが,なんとこの崖崩れの上に道があり,その先に農園やらがあるようです。とんでもない場所です。
しばらくすると山が落ち着き最初の街に出ました。最初の峠でも巴陵でもご飯を食べなかったので,久しぶりの飯です。滷肉飯(ルーローハン)with煮卵,豆腐,筍です。ジュースはレモネードにしました。合計100元(約500円)です。めちゃくちゃ美味しい。 最寄りの駅は桃園のほうにあったんですが,市街地をかなり走らないと駅に着かなさそうだったので,もう少し山道を走って新北市の新店駅へ向かうことにしました。新店駅は台北MRT松山新店線の終点なので,乗ってしまえば自宅まで楽に帰ることができます。しかも他の選択肢と異なり混雑する台北市中心部に入る前に自宅の最寄り駅で降りることができるので,自転車を持っていても煩わしさがありません。多少距離が増えますが新店に向かうことにしました。
レストランから2時間ほどで新店に到着しました。ちょうど満月の日で東の空に大きな月が見えました。そういえば中秋の名月です。台北MRTは追加料金を支払えば自転車をそのまま乗せることができるので,試しにやってみました。駅員に目的地を言ってICカードを差し出せば勝手に発券してくれます。そして改札の横の専用口から入ります。追加料金は80元一律なので,遠くから乗らないと高めです。
終わりに
台湾での初めての長距離1日サイクリングでした。今回の印象は,道案内は案外少ないこと,便利店(売店)は思ったより存在する一方でレストランがそこまで多くない(これはルートによると思う)ことです。峠の頂上のレストランなどに躊躇せず入ってもいいかもしれません。景色は素晴らしいです。険しい山と,その谷にへばりつくような道,山の尾根の途中にある謎の集落が,日本で言うところの紀伊半島や四国の山間部に似ています。また,暇があれば遠くに足を伸ばそうと思います。台7の宜蘭方面への峠越え区間を含め。

































